糖質を多く含むご飯やパン、パスタや麺類、イモ類や根菜類などの炭水化物を減らし、肉や魚などのたんぱく質や脂質を好きなだけ食べる。そんな糖質制限ダイエットはこの数年で大ブームになりました。
スタイルを気にする女性の間でそのやり方を知らない人はいないほどです。そのブームの先駆けになったのが、自身も糖質制限の食事で減量に成功した、ノンフィクションライターの桐山秀樹さんでした。
桐山さんが糖質制限を始めたのは6年前の56歳の時でした。当時糖尿病を患っていて、このままでは生死に関わると医師に告げられたのがきっかけだったようです。
身長167.5cmの桐山さんは当時87kgの体重でしたが、3週間で20kg減。肥満で糖尿病を患うメタボ男性とおやじダイエット部を結成し、その活動を綴った「おやじダイエット部の奇跡」はベストセラーになりました。
そんな桐山さんが2月に亡くなりましたが、心不全による急死だったようです。糖質制限ダイエットの伝道師として知られていただけに、その死をめぐっては糖質制限が原因ではと、様々な憶測が飛び交いました。
糖質制限のメカニズム
もともと糖尿病の治療の1つであった糖質制限のメカニズムは、このようになっています。
糖質をとり過ぎると血液中の血糖値が上がり、インスリンというホルモンを過剰に分泌させます。インスリンは血糖を脂肪として蓄積させる働きがあるので、過剰な糖質の摂取は肥満を招きやすいというものです。
更に血糖値が高い状態が続くとインスリンの働きが低下し、やがて糖尿病に。糖尿病は脳卒中などの動脈硬化症のリスクを高めたり、合併症によって失明したりすることがあります。
そのため糖質を制限することは高血糖状態を解消することにつながり、糖尿病の改善や肥満の解消に役立つとされていました。
ところが最近になって、糖質制限はかえって死亡リスクを高めるとの研究結果も出されてきました。専門家の間でも賛否のある糖質制限の効果ですが、糖質だけを極端に制限するというダイエットが非常に危険な理由が3つあります。
糖質のエネルギーが不足する
糖質は身体にとって必要な栄養源です。減らした糖質分のカロリーを、他のたんぱく質や脂質で置き換えなければエネルギー不足となり、逆に糖質のみを制限して、たんぱく質や脂質を制限なく摂取したとしても、今度はエネルギー過多となってしまいます。
消化不良から腸内細菌が乱れる
血糖値はある一定以下に上がらないように調整されています。血糖値が下がるとグルカゴンという血糖値を上げるホルモンが分泌されます。
グルカゴンが分泌されると胃酸の分泌が抑制されるため、消化不良を起こす可能性があります。消化不良を起こすと腸内環境が乱れ、便秘や腹部膨満感、身体にとって必要なミネラルやビタミンといった栄養素を吸収できないなど、様々な問題を引き起こします。
副腎の疲れが招く不眠や無気力感
過度に糖質制限をしてたんぱく質を摂り過ぎると、腎機能の悪化を招きます。
血糖値を保つために副腎からコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールの分泌が絶えず繰り返されると副腎が疲れ、他の副腎皮質ホルモン「アルドステロン」の分泌にも不調和をきたします。
その状態を副腎疲労症候群といい、不眠や無気力感など、うつ病と同じような症状が特徴です。コルチゾールはストレスホルモンとも言われ、ストレス過多の現代人は副腎が疲弊しているケースが多いので、極端な糖質制限は危険が伴うわけです。
糖質制限すると死亡率が上がる?
2013年国際医療研究センター研究所の医師が約27万人のデータを分析した結果、糖質を1日の総摂取エネルギーの30%以下に制限すると、60~70%にした場合に比べて死亡率が約31%も上がったといいます。
糖質制限をし過ぎると、血中にケトン体という物質が増えすぎるため血液が酸性に傾き、吐き気や意識障害など体に悪影響を及ぼす可能性があります。
また炭水化物を我慢する代わりに肉類をお腹いっぱい食べるとさらなる危険も。脂肪の中で飽和脂肪酸が過剰になれば、悪玉コレステロールが増えて動脈硬化を招きやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります。
流行りものとして安易に飛びつく前に、リスクがあるかもしれないことを知っておきたいものですね。私は元々炭水化物を食べるほうで、ご飯や麺類などが特に好きでしたが、パンだけはやめました。それ以来、体の疲れを感じにくくなっているので、やめて正解だったと思います。